ウーマンリブ 『サッドソングフォーアグリードーター』@本多劇場

すんごい面白かった。クドカン×あおいちゃんの痛快作『少年メリケンサック』がツボに入りまくった私がこれ観ないわけにはいかんよ。あと当日びっくりしたのが音楽が向井さんだったという事(調べとけ俺っつう話だが)。もう布陣、完璧。向井さんのある意味新作ということだよね。嬉しい。即サントラ買いましたよ。そして今聴きまくって大変な事になっています。最高にカッコいい。気が狂いそうなほど。
平日の昼公演しかチケットが取れなかったのだが、最近はそういう日帰り上京で芝居観るのもいいなと。そりゃみのすけさんの名言「芝居は昼よりも夜のほうがぜったい出来がいい」というのをずっと守ってきたところもあったわけですが・・・今月『黒十』二回も観てるしね(!)、資金も無いですよ。でも観終わってすぐアグリードーターの当日券の取り方調べたけどね。もう自分どうかしてるぜ(結局25日に立ち見で、のち繰上げで補助席にて当日席ゲット。しかも二回観ても全然「もっと観たい」との欲、収まらず。私が最初に見た日にカメラ入っていたので某wowwowでやるのかなぁ。大人計画だしな・・・でも音のトチリがあったので、そこはうまくカットするんだろうか?ともあれやるなら早く放送してして(落ち着け俺)以下本編ネタばれありますので注意

冒頭の良々さんの赤木春恵さんネタですがもしかしたら日替わりでやってるのか。二回目はガガ様のことをネタに。安定感がすごいあるよね。きわどいのに、安定感というか安心感・・・すごい変な役者だなあ。「馬鹿は意味が好きだろ」っていうせりふが良かった。
これは・・・!と思ったのが弟役・ふとしを演じた矢本君(大人計画の新人!)。最初ごめん、子役が出とると思ったよ。上手い。で、あおいちゃん演じる翠に寄せる思いだったり寄せ集め家族のぎこちなさを的確に演じてた。陰の主役。今後も期待。
あおいちゃんはもう最初の一言「ただいま」で声の良さが分かるというか。芝居って声が全てのような気が私はしていて、そして佇まい。それがあれば充分で、しかしどちらかが欠けてももう駄目だと思うのだが、あおいちゃんは翠としてビビットに存在してた。誰が相手でどんなせりふを言おうが翠としてブレずにそこに存在してた。
「ただいま」で暗転すると蛍光塗料でセットに実は書かれていたタイトルが浮かびあがる、あのシーンが最っ高にかっこいい。で、流れる不穏な音楽は向井さんだもの。ぞくぞくしたぁ。これ観たさに二回上京したようなものだね;
田辺さんのけん坊*1は後々陰険な人物であることが明らかになるけど、凄かった。正当防衛のうたの時に韓国語で語り始めるのが良かったなあ。松尾さんは。。。空気清浄機がある時点でもうこれはあれだ、となんか分かってしまったネタもありつつ、もう父と娘の微妙なやりとりが面白かった。父息子のやりとりもまた然り。後半で二階にまた引きこもろうとするふとしに「また気配になるのか」って諭して「家族だ」って言って座らせて・・・二階では岩松さん笛を吹き(笑)美しいシーンだった。小路さんは、急に歌いだすあのシーンいいね。でも原曲ようわからんくて家に帰って調べた;宍戸さんは、ちゃんと女性役だった(笑)やっぱ声がいいですね。そこ本当重要。
岩松さんと松尾さんが布団を並べて寝るシーンも良かったなあ。ずーっと観てられるこの感じ。岩松さんってほんとに異界から来た感がすごくあり、一人だけクドカンテイストから自由にはみだすというか、周りの空気を自在にコントロールしてるのが、怖かった。恐るべし。
登場人物がみんなもがきながらぬるじごにハマっていくとしたら、岩松さん演じる犬吠はナチュラルに地獄に足入れてくって感じ。うさんくさいヒモ悪が結局家に取り込まれて第二の父にすり替わるところが本当にシニカル。
話はいわゆるバッドエンドへひた走っていくのだが、みどりの「いってぇなー」て言ってうどん食べて(ボイジャーに「ちょっとあんたいただきますって言った?!」って怒られ)、ごろんって横になって「おとうさーん、タバコとって」って言うところ。父・松尾さんが優しく(っていうのかなあ。ふわーっとした感じで)「二階で吸いなさい」って返して、みどりが素直に「はーい」と応じる。ホントに締めのせりふは岩松さんなのだが、私はこのふたりの最後のやり取りが最高に好きでした。カーテンコールに流れる「天国までひとっとび」ももちろん最高だぜ。またこの組み合わせで何かやって欲しいですぜひ。マジで。

*1:しかしパンフに「好きな和菓子」きかれて「ハッピーターン」て。