松尾スズキ 『老人賭博』読了。

これは。。。楽しみにしていただけある。
斉藤美奈子さんの書評どおり面白いぜー。去年は『女教師は二度抱かれた』を読みつつ
大爆笑していたが、今作は爆笑というよりか「more thanじんわり地獄」というか、読み終えたときのじっとり首筋に蛭かなにか貼り付いたような、
でも主人公に合わせて自分もバカにすがすがしいような、絶妙な気分に陥った。
ほんと、弟子と師匠とか大御所役者とプロンプトとか、人間関係のどんづまり(ぬるじご)を書くのが天才的に上手いよ松尾さんは・・・!
個人的には映像化(しねーと思うが)したときのパンク気味な沖縄の女はやっぱ池津さんに演じてもらいたいよねーとか思った。
心ないやさしさ運動をけなげに(語弊ある?)続ける海が印象的だ。こういう女の子書かせたら松尾さんの右に出る書き手はいない。

文学界 2009年 08月号 [雑誌]

文学界 2009年 08月号 [雑誌]

そして。九月号の湯本香樹実さんの新作『岸辺の旅』も読了。
夏が来ると自然と、もう何回読んだの?というくらいくたくたになった『夏の庭』の文庫本を読み返してしまう。つい最近がまさにそうで、
だからこそ図書館で文学界九月号を見つけたときの喜びといったら!(勝手に自分内タイムリー♪)
夢中で読んだ。
面白かった。最後まで息を詰めて読んでしまったが印象的だった台詞がひとつ。
「でもなんというか、泣きながらでもちゃんとご飯食べそうなとこがあるじゃない?」
主人公がもうこの世の人でない夫との道中で、お世話になった中華料理店のおくさんに掛けられたことば。
こういうところでクスッとさせる湯本さんのユーモアが好きだなあ。
死者と死者は断絶している 生者と生者が断絶しているように
という文中の台詞も忘れられない。