ナイロン100℃ 『神様とその他の変種』@本多劇場 

確かに、違う肌合い。こんなにナイロンで泣かされるとは!な仕上がり。最高の演劇空間。
やっぱりナイロンは面白いよ。定石ないのにハズレない。毎回思う。本当にケラさんは天才。
以下駄文。
本多の前列にいると感じることなのか、となりのヴィレヴァン(このびっくり本屋、好きですけど流れてる音楽が嫌い)
からなーんか音が漏れてくるのよ。うっすら、ズンズンと。
昼公演だけに起きる現象なのか?
静けさが必要な劇に、ジャマだった。
ってアンケートに書けばよかった。

さて本編。マチネD列18番で観劇。DM先行で取った席だが前過ぎて不安に。あと買ったパンフは鞄に入らない!
今日は両親も後から取った後方席で観劇、ナイロンなら前に『ナイス・エイジ』に連れていったこともあるので大丈夫かと。
うちのおっさんは下着姿の女の子の話しかしなかったけどね。観劇後。
それより「人の親になるということ」を噛み締めてくれよ。人の親なんだから。無理か。

●アンケートにも書いたことだが水野美紀さんのことをちょっとあまり評価していなかったのだか非常に良かった。
ほんとにすがすがしい芝居をする裏表のない人だ。急に褒めてすいませんね。これ以降、評価を変えます!
●始まりの水野さんと廣川さん(冒頭からいきなり神様)のやりとりで、面白いかしら今回は。。。と不安な感じで観ていたが、
りえさん登場後の会話のあたりから「あ、これ大丈夫!この芝居、面白い」と確信、そこから一時から四時まで
途切れることなく芝居の世界に浸った。長いのに。辛いとこもあるのになんだろう、最後、終わんなきゃいいのにと
思っている自分に気づいて幸福に思った。
●セットの、ツタが絡まる洋館の外壁が幕という役割も持っていて、そこにタイトルが投影されていつもながら洒脱な映像。
しかも幕が開いたら全キャストが、タイトルの『神様とその他の変種』を歌っている。
もう、こういうのに弱いの。かっこよくって泣いてしまった(泣くところじゃないとは思うが)!!本当にかっこよかった。思い出しても泣けてくる。
●イヌ子さんと山崎さんの夫婦ぶりが個人的にとっても好き。最後、和解した辺り、特に。泣いてしまった。
みのすけさんがケンタロウ役で出てきたとき「ずるーい」と思った。うまいのよいっつも〜
●そんなこと言ったら大倉さんもずるーいってくらい、かわいい(ああ語彙がなくて辛い)。
●長田さんのうるさ型主婦がうまい。

そんなこと言ったらナイロンでへたなひといないけどね。びっくりしたのが植木さん。まさかのおばあさん役(上手い!)
途中、ほんとに今見ているのがナイロンなんだろうか、って思わされるような緊迫に満ちた場面がたくさんあった。
これが、今回の試みなんだ。いやあ当日のチラシに転位21って書いてあってびっくりしたもの。
たとえば水野さん演じる記憶の抜け落ちた女性が過去を追及されるシーン、彼女だけでなく、彼女を取り巻く人々がそれぞれの立場で自分を責める。
信じたものをあっさりと失って自分が抜け殻になった彼女は、とある人にすがり、とある事故に遭う。そして記憶を失う。
「罰を、報いを受けるときがきた」(水野さん演じる家庭教師。記憶を思い出して)
「私を責めないのですか」(実は夫の不倫相手だった上記の女性をホームから突き飛ばした主婦。イヌ子さん演じる)
そして、自殺で子供を失った親の「わからない」という叫び(前述のように不倫の過去持つ敏腕弁護士役の山崎さん。前半と後半の演じ分けが圧倒的です)
子供を愛しつつ夫を立てる、よき母役・妻役を自分に課すうちに狂気をはらみ始めるイヌ子さんが上手い。
片や、子供を愛するあまり抱き潰そうとする親(リエさん演じるケンタロウ母。今作の主演といっていい。ベストアクター)もいて、
親とはいえ未完全な存在であるという真理がそこにある。
嘘を守って家族をも守ろうとする必死な営み(山内さんに父性を初めて役として感じた。ケンタロウ父)にはほろっとした。

いくらシリアスコメディとか言っても言われても、今作はシリアス度合いが異なる、まさかケラさんがこんなものを書いてくれるとは。と思い、泣き、終演後ハナをすすっている人が結構居たので安心。
でも物語を混ぜ返すような笑い転げる場面がめちゃくちゃあって、椅子から落ちるかとも思った。最高!
らしーな〜のナンセンス笑いもふんだんにある上(ハッピバースデートゥユー俺じゃないのかよ!とか*1)、セットも抜群にセンス良くしかも見てびっくりの仕掛け(二度あり)。そうかあの舞台へりを縁取っていた庭石の役目が最後の最後、わかりました。
カーテンコールの拍手、ホント、立ってしたかったくらい、面白かった。名作だと思います。もう一回観たい!!

*1:ここでのリエさんほんと楽しそうに演じててかわいかった